コラム パーツとツールの達人
第1回 規格について
規格には、これまで紹介したような国際的な標準化団体が策定したもの以外に、独自で発展し、標準的になった規格も存在します。
例えばコネクタなどでよく見かけるMIL規格は、Military Standardの略であり、正式にはA United States Defense Standardと言います。つまり、アメリカの国防総省が軍需品調達するための規格であり、ほかの規格などと共通する部分も多々ありますが、これはあくまで独自の規格という扱いになります。ただ、軍需品に使われるほど強度や耐久性が高いという点がセールスポイントにもなるほか、工場や屋外の現場などといった過酷な使用環境で使われる製品には、このMIL規格のパーツを指定している場合もあるため、MIL規格の名前を冠した製品名や型番がそのまま使われることも多いのです。
ほかにも、パソコンの世界で広く普及しているAT規格は、一企業の作った製品の仕様が規格として認識されるようになった例として有名です。これはIBM社が販売したIBM Personal Computer model 5150というパソコンの仕様を公開したことにより、各社がこれの互換機や周辺機器、ソフトウエアなどを簡単に開発・販売することができました。このような手法をオープンアーキテクチャといいますが、これによって一気にシェアが拡大し、事実上、現在のパソコン規格の原点となったのです。その後、5150の後継機としてThe Personal Computer for Advanced Technologies 5170が発売され、これの略称が「PC AT」となっていたことから、これとの互換性を持ったパソコンのことをPC/AT互換機と呼ぶようになり、これの仕様を基準としたものをAT規格と称するようになったわけです。さらに、1995年にチップメーカーのインテルがこのAT規格を発展させた規格としてATX規格を策定し、現在ではさらにこれを発展させたATX2.01規格がパソコンの「業界標準」となっています。国際的な標準化団体によって策定されたものではありませんが、これも国際的な規格として認識されています。
このように、製品が市場の支持を得ることで、規格として確立された例はほかにも多数あります。現在のパソコンに採用されているキーボードの大多数は、アルファベットの一番上の列を左から見るとQ-W-E-R-T-Yの順に並んでいます。これは一般にクワーティとかクウェルティ配列と呼ばれていますが、英文タイプライターの配列が元になっています。英語圏ではタイプライターが普及していたため、パソコンもキーボードのアルファベット配列をタイプライターと共通にしたのです。
ただこのQWERTY配列は、規格として明文化される前からタイプライター市場の標準仕様として扱われてきました。このように、明文化されていないにも関わらず、事実上の標準になっているもののことを「デファクトスタンダード」と呼びます。もっとも、ANSIが設立されたのは1918年であり、QWERTY配列が一般的になったのが1880年代なので、規格として明文化する組織が存在しなかったのも一因ですが。もちろんANSI設立後には、このQWERTY配列もANSIの規格のひとつとなります。このようなデファクトスタンダードにはほかに、インターネットで利用されているTCP/IP通信方式などもあります。
オープンアーキテクチャもデファクトスタンダードも、上記のように市場の支持を得て標準的になりました。そしてまた多くの場合、その仕様はのちに国際的な組織や業界団体などによってそのまま規格となるか、それを基本とした国際規格が策定される土台になります。







