コラム パーツとツールの達人
第5回 鉛フリーはんだ 1
地球環境を守るため、さまざまな業界でいくつもの取り組みが始まりました。特に自動車分野のハイブリッドなどは、連日のように新聞やテレビの話題となっています。そんな中、車などに比べてマスコミの話題となることは少ないながらも、電子工業分野にも大きな変革が訪れました。それが、いわゆる「鉛フリー」問題なのです。EUのRoHS指令から始まったこの鉛フリーは急速に広まっており、今やはんだ市場の約3/4を占めるほどに成長しました。そこで今回のテーマは2回に分け、いわゆる鉛フリーの現状や従来方式との違い、そして最新の情報と今後の展望などといった部分をまとめてみましょう。
2003年2月、EUでRoHS指令が公布されました。これは環境保護を目的とした指令であり、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6物質を一定以上含む製品を、EU加盟の27カ国に上市できないというものです。ここでいう上市とは、税関に持ち込むことをいうので、つまりは規制に適合しない商品は、EU圏内への一切の輸出入が禁止されることになります。また同時に公布されたWEEE指令(Waste Electrical and Electronic Equipment Directive)は、電気・電子機器のリサイクルに関する指令であり、製造者に製品が廃棄された際に環境へ負荷を与えないように配慮する義務が生じるとと同時に、回収やリサイクルについても製造者の責任とするというものです。
このRoHS/WEEE指令は、ともに2006年7月1日から施行されることとなり、電気・電子機器の輸出が多い我が国では、非常に大きな問題となりました。いずれの物質も、従来の工業分野では日常的に使われていましたが、特に電気・電子機器の生産に欠かせないはんだの原料である鉛が規制されたことは、衝撃も大きかったのです。これにより、約5000年にわたって使い続けられてきたはんだに、初めてといってもよいほどの大きな変革が求められることになりました。
ただ、単に鉛を含んだはんだを禁止すると言われても、さまざまな問題があります。例えば銀などの粉末を含んだ導電性接着剤がありますが、これを上手に使用すればはんだの代用品として同じように回路を組み立てることは可能です。しかし、従来のはんだを前提とした製造装置や機器類では接着剤に対応できないため、機器類の交換や製造工程の改変が必要になり、莫大なコスト増加となってしまいます。しかも導電性接着剤の信頼性はまだ完全に評価が終わっておらず、市販する電気製品に使用するのが適当であるか否かの議論も分かれるところです。そこで従来のはんだに近く、大幅な装置や工程の変更を行うことなく製造が続けられる方法として、鉛フリーはんだ(無鉛はんだ)が使用されることになりました。
なお現在では、このような規制はEUだけでなく、環境を守るという観点から世界各国で同様の制度が始まっています。2007年には中国で、「電子情報製品生産汚染防止管理弁法」、いわゆる中国版RoHSが施行されました。この中国版RoHSはEUのものとほぼ同じ内容ですが、EUのRoHS指令では適切な代替措置の無いものに関しては除外するという規定が設けられているのに対し、中国版では、一切の除外規定を認めていないのが特徴となります。そして今では我が国はもちろんのこと、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、カナダ、アメリカ、アルゼンチンなどでも同様の規制が行われており、鉛フリーはんだは世界的な標準となったのです。
| 鉛 | 1,000ppm以下 |
| 水銀 | 1,000ppm以下 |
| カドミウム | 100ppm以下 |
| 六価クロム | 1,000ppm以下 |
| ポリ臭化ビフェニル | 1,000ppm以下 |
| ポリ臭化ジフェニルエーテル | 1,000ppm以下 |







