コラム パーツとツールの達人
第6回 鉛フリーはんだ 2
鉛フリーはんだには、現在のところ上記のような問題点が判明しています。しかしながら、問題点はすでに解決方法がほぼ確立されており、その方策を用いれば、従来の鉛入りはんだとほぼ同様に利用できます。
まず熱問題に関しては、ほとんどの場合、鉛フリーに対応したはんだゴテを使用することで解決可能です。鉛フリー対応のはんだゴテは、従来の製品よりもやや高めの温度で使用することを前提として設計されており、これまで慣れ親しんだものとほぼ同様の感覚で鉛フリーはんだを使えるようになりました。またコテ先のメッキも従来方式のものよりもかなり厚めになっており、錫による鉄メッキ部分の食われにも対策が施されています。
とはいえ、温度の許容範囲が狭い鉛フリーはんだを使用するには、一般的なはんだゴテではコテ先の温度管理が難しいのは事実です。そのため、より温度管理を厳密に行う機能を搭載した「温度調節型」のはんだゴテを使用する方がより望ましいと言えます。
これまで温度調節型のはんだゴテは非常に高価であり、パーソナルユーザーには手の届かないシロモノでした。しかしここに来て、価格もずいぶんとこなれています。もちろん機能を持たない製品よりは当然高価になりますが、鉛フリーはんだの普及にともなって比較的手の届きやすい価格帯の製品も続々と登場しています。温度調節機能付きのはんだゴテは、一本で多用途に使用可能なこと、そして一度購入すれば長く利用できるツールでもあることなどを考慮すれば、パーソナルユーザもこれを機会に購入を検討する価値は十分にあるといえます。
なお、熱破壊を起こしやすい半導体などは、熱耐久に優れた同等品を部品メーカーが開発しており、このような熱耐久に優れたパーツを使用することでトラブルを抑止できます。続いてはんだボールに関しては、最新のものでは糸はんだ自体にV字型の切れ込みを入れて、ヤニの爆発を防止する工夫がなされたものが増えています。さらにはんだに封じ込められたヤニが急激に熱せられることが爆発の原因でもあるため、事前にはんだ自体をある程度暖めておき、はんだゴテで熱したときとの温度差を少なくする「プリヒート」を行うことで、発生をほぼ防止できます。また部材などもプリヒートしておけば、ウィッキングを防止する効果もあります。
このようにプリヒートは、鉛フリーはんだの問題を解消する有効な手段なのです。しかしながら、単にプリヒートが有効だといわれても、はんだや部材に予熱を与えるのはかなり面倒な作業です。もしもプリヒートを頻繁に行う必要があるのなら、プリヒート効果を簡単に実現可能な高温の窒素ガス噴出機能を搭載したはんだゴテを利用するという手もあります。これにはプリヒート効果だけでなく、窒素ガスによって酸素を遮断し、はんだの酸化を防ぐ効果もあるため、特に鉛フリーはんだとは相性がいいことがわかっています。ただ、装置自体が非常に高価であるほか、窒素ガスボンベを別途に用意する必要もあり、とても一般のユーザーが利用できるものではありませんでした。でも現在では、空気中の窒素を透過膜で取り込んで利用するという製品が、比較的安価で提供されるようになりました。もちろん安くなったとはいっても、やっと個人レベルでも購入を検討できるかなといったレベルですが、近い将来にはもっと価格もこなれてくるでしょう。
フラックスに関しては、従来よりも高温で効果を発揮するものが開発され、これも鉛フリー対応型を使うことで解決可能です。また引け巣は、はんだが冷えて硬化する際の温度差が原因であり、はんだ面全体を迅速に冷却することが有効です。そしてウイスカーやクリープ現象については、応力によって発生することがわかっているため、力のかかる部分にはんだを使用しないことで防止できます。
以上のように、鉛フリーはんだを使用するうえで問題となる点に関しては、ほぼ防止策が確立されています。もちろんその一部に関しては、対処療法的な手段であったり、新たな機材などを用意する方が望ましいものもあります。とはいえ、大部分の問題に関しては微細な場所や特殊なポイントへのはんだ付けでのみ発生する可能性がある問題であり、一般的な回路を組む程度なら何ら問題はありませんし、特別に意識する必要すらありません。つまり鉛フリーはんだは、すでに十分な実用レベルに進化しているのです。







